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【ケース10】築9年のアパートオーナーF氏 10年以内の施工保証で無償修繕できますか?

2018.04.22

ライター:横山 篤司

<現状と課題>

築9年の3LDKファミリーアパート30戸のケース

〇〇県で賃貸アパート(築9年)を営む不動産オーナーF氏(62歳)は、現在、屋上防水シートの修繕工事をするべきかどうか悩んでいる。F氏は、2009年に3LDK のファミリー向け賃貸30戸(駅徒歩11分)のアパートを、建売会社より一括借り上げで建物を建てて管理を委託し、家賃保証契約(サブリース契約)を結んだ。しかし、築5年目くらいより外壁にひびが増え、タイルが所々、剥がれはじめていることに気づいたため不安を感じていた。そして築9年目の時に屋上を調査すると、すでに屋上のアスファルト防水に浮きが見られる状況であった。

10年以内の施工保証で無償修繕できますか?

一般的には新築から10年間であれば施工会社への保証の範囲内で直すことができます。

<課題に対する基礎知識>

しかし、実際には、以下のようなことが想定されます。 1.建物の施工に瑕疵があることを証明することが難しい 2.不動産オーナーが素人ではなく、プロ(事業主)と認識されることがある 3.法律上は瑕疵を証明できても裁判や調査費用にお金がかかること つまり法律においては、新築より10年目以内での無償修繕ができることが認められても、実際に業者に対して交渉をする上では不動産に関する知識が必要となります。あるいは不動産オーナー側にも建築士弁護士などの専門家を用意し、瑕疵があったかどうかの調査及び瑕疵の立証を行わなければなりません。

①住宅品質確保促進法について

質の高い住宅をつくり、安心して住めることを目的として、2000年(平成12年)4月1日に施行された法律「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」があります。
住宅品質確保促進法、略して品確法(ひんかくほう)
第一条)この法律は、住宅の性能に関する表示基準及びこれに基づく評価の制度を設け、住宅に係る紛争の処理体制を整備するとともに、新築住宅の請負契約又は売買契約における瑕疵担保責任について特別の定めをすることにより、住宅の品質確保の促進、住宅購入者等の利益の保護及び住宅に係る紛争の迅速かつ適正な解決を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
この法律では、以下の3つの内容を軸としています。 (1)新築住宅の瑕疵担保責任期間の10年間義務化 (2)住宅性能表示制度 (3)裁判外の紛争処理体制 ⇒専門家による解釈とケーススタディ(会員専用)

②瑕疵担保責任について

瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
建築請負や不動産売買などの有償契約において、その目的物件に一般の人では簡単に発見できないような瑕疵(欠陥)があった場合、売主(受注者)などの引渡し義務者が買主(施主)などの権利者に対して負わねばならない担保責任のこと。
一般的に不動産や建築に関する経験や知識の少ない人に対して、施工者はどんな理由があるにせよ、施主に対して瑕疵の治癒を行わなければなりません。 しかし、不動産オーナー(あるいは宅地建物取引士等の資格を持つ人)が、一般人とは言えない「事業主」や「プロ」であったと見なされると、たとえ不動産の実務経験が少なかったとしても、本法律の適用外となってしまうことがあるでしょう。 ⇒専門家による解釈とケーススタディ(会員専用)

10-3 住宅瑕疵担保履行法について

住宅瑕疵担保履行法(じゅうたくかしたんぽりこうほう)
新築住宅の売主等は、住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づき、住宅の主要構造部分の瑕疵について、10年間の瑕疵担保責任を負うこととされていますが、構造計算書偽装問題を契機に、売主等が瑕疵担保責任を十分に果たすことができない場合、住宅購入者等が極めて不安定な状態におかれることが明らかになりました。 このため、住宅購入者等の利益の保護を図るため、「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(平成19年法律第66号)(住宅瑕疵担保履行法)」が成立・公布されました。
⇒専門家による解釈とケーススタディ(会員専用)

<課題に対する対応>

建物に欠陥が見つかれば、施主は施工会社やハウスメーカー等に修繕を求めることができ、新築住宅(一戸建て、分譲、賃貸問わず居住用であること)は、完成引渡しから10年間の保証が義務づけられています。しかし、「10年間の保証があるから安心だ」というとではありません。そこで、このような課題に対してどのようなことから考えていくべきかを解説します。

保証はあっても欠陥工事を立証することが難しい。

実際に保証の対象となる部分は以下の通りです。 ○対象となる部分 ・構造耐力上主要な部分 基礎、柱、屋根、床、小屋組、土台、筋交いなど ・雨水の浸入を防止する部分 屋根、外壁など ○請求できる内容 ・修補 ・損害賠償 ・売買契約の解除(修補不能な場合) 上記に反して、買主(または施主)にとって不利な特約は無効です。期間を10年未満に短縮することもできません。 私の経験では、海沿いのアパートであれば塩害被害や強風によって外壁や防水の劣化が非常に早くなり、経年劣化として10年も経てば赤錆だらけになってしまったこともあります。また、そのアパートが建っている土地が埋立地や元々沼地であったりすると、地盤が弱いために杭基礎(建物を支える柱など)が多少曲がってしまったりすることもあります。しかし、目に見えるレベルになるまでには、10年程度では症状がみられませんので、10年保証の対象範囲内で被害が出ることは少ないと言えます。

施工会社やハウスメーカー等にお金がない、倒産してしまっている。

2009年より住宅瑕疵担保履行法といわれる保証金の供託や保険ができ、倒産した施工会社やハウスメーカーに代わって保証する仕組みができました。 しかし、実際にこの保証金制度や保険が適用される条件が非常に厳しく、説明できる人が限られているために現実的な制度ではないといえるでしょう。

業者が自分に有利となるプロを紹介するのでオーナーには不利。

一般的に、建物の施工トラブルや問題が目に見えるようになるまでには10年から15年ほどかかると言われています。実際には経年劣化(けいねんれっか)といわれる自然損耗であるのか、本当に瑕疵があったのかを証明することは難しく、最終的にはオーナーが修繕負担をしなければならないことがほとんどでしょう。 <業者側意見> ・この程度の防水シートの劣化やダメージは経年劣化である。 ・水漏れしているわけではないので瑕疵とはいえない。 ・保証の対象範囲ではない。 <当方側意見> ・すでに建物外壁に雨水等が浸水しており数年以内に水漏れが起きるのは明らかである。 ・築11年目を過ぎれば施主が全額の負担となるので問題を隠したいのではないか。 実際に、オーナー側からも専門家(防水工事専門の施工会社)を派遣し、業者と以上のようなやり取りが実際に行われましたが、簡易補修を業者負担で行うことが決まったため、問題が解決しました。

<専門家のアドバイス>

施工会社やハウスメーカーが連れてくる専門家は施主の味方とは限りません。但し、紳士的な施工会社であれば、多少の外壁の破損や防水シートの破損に対しても保証をしていただけることの方が多いのではないでしょうか。施工時から良好なお付き合いをしているオーナーさんであれば、業者としても大きな問題にはしたくないという心理が働くと考えられます。 しかし、最近は10年程度でオーナーが入れ替わるなどして、人間関係が希薄化してきているのも事実ですので、不動産の知識や法律を正しく理解していくことが大切です。 【不動産オーナー経営学院】おすすめの学科⇒投資学科(建物調査科目) ⇒専門家による解釈とケーススタディ(会員専用) 不動産について学びたい方はこちら ======================================

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ライター紹介

横山 篤司地主学第一識者/不動産オーナー経営学院代表/執筆者・ライター

地主学第一識者/不動産オーナー経営学院代表/執筆者・ライター/NewYork留学、外資系投資銀行、不動産経験20年/不動産経営を分かりやすく教える事を大切にしてます。これまで日本で10,000人以上のオーナーと話し、不動産学として事例や成功体験を研究。創業80年名古屋の三代目地主の家系に生まれる。自らも実業家として宅地建物取引士、事業承継マネージャー、マンション管理業務主任者の資格を保有。プロの不動産投資を学び、家業再生にも力を入れ、借金を数年で完済することに成功。現在はビルやマンション、商業施設、駐車場等を経営。

中小企業庁主催「事業承継セミナー2017」モデル企業登壇/JFMA「不動産MBA」研究員/週刊ビル経営「建替え経営学」連載/全国賃貸住宅新聞/月刊不動産流通(宅建協会)ほか。

横山 篤司

不動産オーナー経営学院リーブス REIBS|不動産を所有してから学ぶ、不動産オーナーのための経営学院|基礎から学び、成果に結び付けるカリキュラム|2013年創業

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