第十三回 共同事業による建替えの注意点とは

<建替えフェーズ② 必要経費は年間賃料収入の10年分> |
2017年春に名古屋駅前で新ビル竣工。2015年6月に本社ビル解体着手するまでに5年、建替プロジェクト完遂までに足掛け約8年の歳月をかけた上で再建し、父と共に「戦略的不動産経営5カ年計画」を実行した経験則をお伝えします。現在は全国の中小不動産オーナーの建替えプロジェクト顧問に就き、不動産学校内でプロチームを組成。新築ビルの竣工前満室、本社ビルの財務健全化、トラブルの自力解決など数多くの事例を積み上げる。
○私の経営体験談
建替えの実施する上では、「単独」で行う、あるいは他の事業者と「共同」で行う2択があります。単独で行う場合は完全所有権となりますが、他の事業者と共同で行う場合は共有あるいは区分所有権のどちらかを選択します。今回は単独事業と共同事業を比較した場合の考え方をまとめました。
一般的に単独事業での建替えは、個人や企業に資金がある、あるいは小規模な開発を行う場合です。それ以外は、企業、パートナーあるいは親族間で資金を出し合う共同事業での建替えとなります。
まず「収入権」とは、不動産事業から生まれる賃料収入に対して、誰にどの割合で配分するかという権利です。一般的に所有権の持分割合によって所有者の収入権が按分されます。それに対して「議決権」とは、管理や修繕等を行う上での決定権の割合で、規約の定めにより変更することができます。また不動産を売買する際の「資産価値」は、完全所有権>区分所有>共有と価値が下がります。「担保価値」は所有者が自由に不動産を処分できるかどうかという指標があり、共有の場合は担保がつきにくくなります。そして、「相続問題」はこれらの所有形態が要因となり、トラブルが起こるかどうかを表しています。
○ポイント=共同事業では議決権が実は重要
「不動産は利回りが高ければよい。」日本ではこのように考える人も多いですが、不動産の所有形態をしっかり考えた上で経営や管理を心がけることも大切です。特に区分所有や共有で少数の議決権あるいは持分割合しかない場合、自分の意思が通らないことも覚悟しなければならないでしょう。