Q1. 私は不動産オーナーの後継者です。これまでは父と役員(番頭さん)で不動産経営を行ってまいりました。私が後継者としてこれから何をしなければならないかを考えておりますが、父のやり方では管理効率が悪くて将来立ち行かないと思うのですが何から勉強すればよいのでしょうか?
不動産賃貸業は「経営業」です。
学長「私も同じような環境の中で、父と共に不動産経営業の改善を始めました。まず不動産経営を始めるうえで最初に学んだことは、不動産の中での売上は何か?費用は何か?利益とは何か?でした。」
不動産賃貸業の基本その①
不動産経営における売上として、「賃貸収入」があげられます。賃貸収入の中で大きな項目を占めるものは「家賃」ですが、収入をあげる上で考えるべきことは家賃の値上げだけではなく、入居者の退出頻度、家賃の滞納、空室期間などによって見えない損失を減らすことで総収入は上がります。
学長「例えば、共用部に自販機設置、屋外看板や携帯基地局の設置、駐輪場やバイク置き場の新設と駐車料の徴収などで賃料外収入を増やします。また家賃滞納を未然に防ぐために家賃保証会社への加入や入居者特典の追加なども考えることで収入減を防ぎます。(事例紹介参照)」
次に、不動産経営における費用として、「管理費用」があげられます。管理費用の中で大きな項目を占めるものは「清掃、警備、設備等の管理」ですが、費用を削減する上で考えるべきことは管理費を値下げすることだけではなく、緊急事態を防ぐための予防的な計画修繕、水道光熱費の削減、原状回復の際の細かいチェックなどを行って適切に維持管理をする必要があります。
学長「例えば、カーペットや壁紙を撤去・スケルトン化にすることで清掃費や管理費を大幅削減(管理の見直し)、機械式駐車場など修繕費のかかるものは直さずに撤去(駐車場収入も減るが)、無理に原状回復せずにスケルトンで店舗貸しする(賃貸募集の転換)など、抜本的な管理仕様の変更も効果的です。」
不動産の利益を残すうえで、毎年必ず必要な固定費用を削減するのは難しいため、まずは優先的に注目する項目を3つほどつくるとよいでしょう。
今日のおさらい 売上-費用=利益の関係図(REIBS基礎編第一章)
学長「皆様に必ずお伝えしていることは、不動産テクニックの自慢、費用削減などの解決自慢を控えるようにお願いしております。賃貸経営は経営業ですから、多くの選択肢の中からどんな不動産サービスを選ぶべきか?判断能力と情報量がカギとなります。見た目の数字に囚われてはなりません。費用を削減したことによるリスクは数字だけではなく、信用を失う、将来の緊急対応費用が上がる、あるいは自分の知らない間に契約書によって法的に縛られてしまう恐れもあります。プロの基本は、各業務に対して専門家チームを内外部に置き、正確な情報や調査を基に、ひとつの決断を下すことをおススメしております。」
週刊ビル経営H27年8月3日号に掲載