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立ち退き料の相場を5つのポイントで徹底解説【店舗・ビル・テナント・一軒家共通】

 2021/04/28 お悩み事例集 建替え
この記事は約 11 分で読めます。 13,228 Views
テナントのビル

明渡請求、解約予告、立ち退き料の交渉、そして立ち退き実行までの流れを解説します。また立ち退きの際に考えるべき「立ち退き料の相場」について、一軒家、店舗、ビルのケースに共通する5つの考え方を解説します。

立ち退き料 相場の算出方法とは?

「立ち退き料」の金額の算出方法は、

(1)普通借家権の買取(入居者の権利の買取)

(2)移転費用(引越費用、仲介費用、敷金返金)

(3)営業補償(登記変更費用、のれん代など営業上の損失が出る場合の費用)

(4)造作買取費用(設備内装費などの費用)

(5)慰謝料+α

の5つが主にあります。

しかし、実際に立ち退きに関わった身からすると、立ち退き料の金額の算出方法に決まりはありません。

また、一般社団法人不動産オーナー経営学院REIBSが独自の調査をおこない、全国の立ち退き事例を調査した結果、弁護士が入り、かつ立ち退きの裁判に至ったケースというのは全体の3%程度であることがわかりました。

そこで立ち退きを深く理解するうえで役立つ情報をここでは紹介させていただきます。

 

立ち退き交渉は示談解決がほとんど

立ち退き示談交渉

先に結論から申し上げますと、実際に多額の立ち退き料を支払うケースは少なく、「双方(オーナーと入居者)の示談による解決」がほとんどです。

しかし、立ち退きを経験した当事者の多くが不安に思うことがあります。

たとえば、立ち退きをするときに、入居者に対して「建物の老朽化に伴う建物解体のお知らせ」をします。その際には、立ち退きに関する法律上の判例を理解したうえで、「本人」あるいは「本人の代理人」による交渉を行わなければなりません。

そこで、「立ち退き交渉をするときは弁護士に相談しなければならないのか?」といった相談をよく受けます。なぜならば、立ち退き行為は、交渉の長期化が予想されたり、トラブルが多いといった先入観があり、金銭交渉になりがちだからです。

その結果、立ち退きに関する情報は「立ち退き料」に関する情報が多く、実務的な流れについては「表に出にくい」のが実状です。

 

そこで、ここでは、住居、店舗、事務所の各用途に分けて、立ち退き交渉の流れについてケーススタディを用いて解説します。

 

立ち退きとは「明け渡し請求」をする行為のこと

立ち退きとは、建物の所有者が建物を解体する目的で、現在入居している人に対して建物の明け渡し請求をする行為を指します。そこで現在の入居者に対して、立ち退き交渉から明け渡し請求を行う過程において「立ち退き料の提示」をします。

 

立ち退き料に決まった相場はない

日本では、立ち退き料に決まった相場はないと言われています。

 

補足をすると、立ち退き料だけでなくそれ以外にかかる費用を含めた金額を考える必要があります。

そうなると、明け渡し請求をする際の弁護士への相談費用や、トラブル時の損害賠償や交渉の長期化が心配だと思う人が多いのが現状でしょう。

とはいえ、ここは立ち退き料を考える前に、順を追って立ち退き交渉の流れを見ていくとわかりやすいと思いますので詳しく解説していきます。

 

立ち退きの5つのステップとは?

立ち退きの流れ

 

立ち退きを考えていくうえでは、

①転居の打診(準備~お知らせ~転居の打診まで6カ月から1年)

②転居先の提案(転居の打診~転居先の提案まで1年から2年)

③明け渡し請求(上記に応じない場合は期日を区切って通知)

④訴訟(明け渡し請求~訴訟まで1年~2年)

⑤判決

という5つのステップに沿って順に行っていくとよいでしょう。

 

まず、立ち退き交渉の期間は一般的に1年~2年かかる、長ければ2年以上になると想定してください。その際に「立ち退き料」を早めに提示することで交渉期間を短縮できる場合がありますが、実は、金銭解決ができない場合にはさらに交渉期間が長期に及ぶことがあります。

さらに提案には「タイミング」が重要です。

このタイミングについては用途に応じて各事例別にご紹介します。

>>店舗・クリニックの立ち退き事例(交渉期間約3年、入居者8件)

【店舗】店舗の立ち退き料で1件あたり3000万円は本当か!?3年間の交渉実務を紹介

>>事務所・ビルの立ち退き事例(交渉期間5年、入居者100件)

【ビル】築45年のテナントビルの立ち退き交渉と建て替え事例

>>住居アパートの立ち退き事例(交渉期間6カ月、入居者8件)

 

賃貸明け渡し請求の正当事由とは?

スーツの男性がいいねと親指を立てている

建物の所有者が、入居者に対して建物の明け渡し請求をするには「正当事由」(せいとうじゆう)が必要です。詳しく言いますと、入居者に対して「なぜ立ち退いてもらわないといけないのか」の理由を明示しなければなりません。

明け渡し請求には、賃貸人(オーナー)に正当事由がなければなりません。

そこで、弁護士からの回答としては以下の4点がそれに当たります。

明け渡し請求を行うために必要な4つの理由

①賃貸人及び賃借人が建物使用を必要とする事情
②建物賃貸借に関する従前の経過
③建物の利用状況
④建物の現況 

立ち退き料は、明け渡し請求を行うために必要な4つの理由のうち、これらの事情を考慮した上で、この4つの理由では不十分な場合に、5つ目として「立退き料」の支払いを申し出ることによって正当事由を補完(ほかん)できるとされています。

正当事由については以下が具体的に挙げられます。

 

賃貸人及び賃借人が建物使用を必要とする事情

①賃貸人及び賃借人が建物使用を必要とする事情

・居住の必要性
・営業の必要性
・建物売却の必要性

建物賃貸借に関する従前の経過

②建物賃貸借に関する従前の経過

・入居者に相場よりも相当安く貸している
・入居者に滞納履歴や行動履歴に問題がある
・暴力団等の介入行為等

建物の利用状況

③建物の利用状況

・貸室の使用状況(実際には住んでいない等)
・無断転貸などの契約違反がある 

建物の現況

④建物の現況

・建物の老朽化や耐震性の問題がある
・設備更新するのに著しく金銭が必要となる

正当事由は、上記①から④の理由に⑤の立ち退き料の補完を加え、総合的に判断します。

 

立ち退き料の相場とは?

金額は?

立ち退き料の相場では、最低限必要となる立ち退き料にかかる金額と、もし裁判となった場合にかかる金額を解説させて頂きます。

 

最低限必要となる立ち退き料の目安

一般的な立ち退き料の相場は、

建物用途 賃料の目安(○カ月分)
住居(アパートやマンションなど) 賃料の3カ月~6カ月程度
事務所(事業所、営業所など) 賃料の6カ月~1年分程度
店舗(小売・物販店、学習施設など) 賃料の2年分~3年分程度

たとえば病院、ホテル、飲食店などは既存設備に多額の投資をしているため、移転交渉の際の営業補償や造作買取や高額になることがあります。また移転先への設備移設や増設工事にも費用がかかることが考えられます。不動産会社が考える立ち退き料の相場として、住居は賃料の3カ月分、事務所は賃料の6カ月分、店舗は長期に渡る入居者の場合で最大賃料の2~3年分と言われます。

 

裁判となった場合の立ち退き料の目安

また裁判となった場合の立ち退き料の目安は、

建物用途 最大金額の目安
住居(家賃5万円~10万円程度) 100万円~150万円
事務所(家賃10万円~20万円程度) 300万円~400万円
店舗(家賃10万円程度) 1000万円~1500万円

このような立ち退き料の最大金額の目安は参考程度と考えましょう。主に弁護士費用の算出時において案件総額から逆算した報酬設定をすることがあるため、弁護士への相談はトラブルになったときの抑えとしておくとよいでしょう。

 

立ち退き料の相場算出方法

立ち退き料の算出方法について、立ち退き料を算出する5つの方法について説明します。

(1)普通借家権の価格(不動産鑑定士等が対応)
(2)移転費用(仲介会社等が対応)
(3)営業補償(設計士や仲介会社等が対応)
(4)造作買取(建築士等が対応)
(5)慰謝料(弁護士等が対応)

これらの費用の算出方法において「専門家」による職能を勘案すると、「立ち退きの専門家」は本当に少ないことがお分かりになるかと思います。立ち退き料の算出には幅広い知識、高度な経験が問われるため、弁護士の業務とは言い切れない所以があります。

 

立ち退き交渉は誰が行うのか?

立ち退き交渉は誰が行うべきでしょうか?

このような質問が多く不動産オーナー経営学院の元に寄せられます。

立ち退き交渉の窓口としては以下が想定されます。

1.本人(オーナー)が直接行う
2.管理会社が行う
3.建設会社が行う
4.弁護士が行う
5.再開発組合(不動産所有者等)が行う

結論から言いますと、立ち退き計画の中で想定することは、どの入居者が交渉で難航しそうか?を予め想定することから始まります。

立ち退きをする上では、本人(オーナー)が矢面に立って直接交渉をすることはお勧めできません。なぜならば、立ち退きの過程で、本人(オーナー)が入居者に対して感情的になったり、事情や心情を理解できないと、入居者の怒りを買ってしまい交渉が長引く恐れがあるからです。

 

立ち退き計画の立て方

そこで立ち退き計画をしっかりと立てていく必要があります。

つまり、立ち退きの計画から実行まで、実際に「誰」が行うべきでしょうか?

これは経験者である私(筆者)が述べるのは恐縮ですが、弁護士が行うというよりは、不動産会社(特に経験者)の協力が不可欠です。

たとえば、私は、現場の状況によって立ち退き交渉の窓口を入れ替えます。

1は、本人(オーナー)が入居者と関係が深い場合に行う

2は、建物管理を行う際に相談窓口となる。

3は、開発会社やハウスメーカーが建て替えを主導する際に相談窓口となる。

4は、本人(オーナー)の弁護士が相談及び交渉窓口となる。

5は、複数の共同所有者(オーナー)が交渉を行う際は再開発組合などの団体をつくり、弁護士も入り、交渉する。

筆者は、これまでのアパートやマンション、ビル、店舗などの経営について所有者(オーナー)から聞き取りをしたうえで、「経済的な負担を減らす」ことを前提として専門家を選定してきました。所有者(オーナー)がしっかり不動産経営の知識を身に着け、所有者(オーナー)の判断で立ち退きをすることが一番経済的にも精神的にも負担がないと思います。

 

立ち退き計画を実行する上での注意点

ただし、立ち退き計画を実行する上では、事前に入居者の情報収集を行い、適切かつ迅速に交渉することが不可欠です。

✕ すぐに現在の入居者に対して明け渡し請求書面を送らないこと

✕ すぐに立ち退き料の交渉をはじめないこと

✕ 入居者の事情や心情を理解しないまま立ち退きをしないこと

いちばん最悪のケースとして考えられるのが、明け渡しに反対をする「居座り行為」や「相手方弁護士の登場」です。入居者が立ち退き拒否をして「居座り行為」をすれば、交渉が長引いてしまう恐れがあるからです。その場合には、賃貸人(所有者側)も賃借人(居座り側)も弁護士を立てて裁判が長期化するため、両者に弁護士費用や裁判費用などの「金銭的な負担」が強いられます。

ここは筆者のオーナー側としての見解ですが、両者のどちらかが勝つ確率は20~30%と言われており、その多くは勝ち負けのない「双方敗者(示談解決)」に終わりますので訴訟はお勧めしません。

つまり、訴訟となった時点で両者には金銭的損失や長期の時間的ロスは覚悟しなければならないといえるでしょう。

 

立ち退き料相場 まとめ

最後に、何千件と立ち退きに立ち会ってきた専門家曰く、「立ち退き交渉の経験がすべて」です。

加えて、法律上の判例を加味したうえで、適切なタイミングで交渉を進めるかどうかで立ち退きの成功率が大きく異なります。

 

立退きに関する事例解説と弁護士の判例解釈は不動産オーナー経営学院REIBS研究会で詳しく解説しています。

→どのような理由があれば正当事由と認められるか?

→立ち退き料とは?

→明け渡し請求とは?

昔の人曰く、立ち退きは「ゴネ得」と言われたそうですが、近年は老朽化した危険な建物や、大きな再開発の際に、たとえ入居者に正当な理由があったとしても所有者が勝つ判例が出ています。実際に「最後の一軒」が存在することで地域の経済的損失が著しい場合には、「裁判所より入居者への退去命令が出た」という判例があります。

筆者は、所有者側として立ち退き交渉の実体験者の一人です。実際に「最後の一軒」が立ち退くまでの経緯を見てきましたし、最後の一軒は立ち退き料をほとんど受け取ることができませんでした。

 

もし私が立ち退きを受ける側であれば、ラスト3件くらいになったらお金もらって手じまいするのが吉ですね。

→立退き料の算出方法やケーススタディは不動産オーナー経営学院REIBS研究会で解説しています。

 

Youtubeでも「立ち退き」に関する紹介をしています。

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横山 篤司

横山 篤司

宅地建物取引士、事業承継マネージャー、マンション管理業務主任者の資格を保有。 これまで日本で10,000人以上のオーナーと話し、事例や成功体験を研究。創業80年名古屋の三代目地主の家系に生まれる。ニューヨークでの大学院留学、東京で外資系投資銀行のモルガンスタンレーに勤め、プロの不動産投資を学び、家業再生に活かしたことで事業再生、借金を数年で完済することに成功。現在はビルやマンション、商業施設、駐車場等を経営。 中小企業庁主催「事業承継セミナー2017」モデル企業登壇/不動産オーナー後継者の会/JFMA「不動産MBA」研究員/週刊ビル経営「建替え経営学」連載/全国賃貸住宅新聞/住宅新報/月刊不動産流通(宅建協会)ほか。

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