悪い建築会社に騙された!①1億2600万円の新築アパート~土地活用で失敗した8つのポイント~
2022.04.6
今、日本では空前の賃貸アパートやマンションの建築ブームです。
一方で、はじめて新築アパートを建築する大家さんが悪い建築会社に騙されたり、建築トラブルで泣き寝入りしている現状があります。
↓以下は実際の新築マンション建築の実施見積です。
スカスカな工事見積書・・・。
この見積では、工事内容に「一式」と書かれ、「金額」しか明示されていません。
しかし、この見積のまま工事が着工してしまい、建物の中間検査まで終わった時点で「裁判」となりました。
この裁判では、建築後に追加工事が発生した費用をだれが負担するか?が争点となりました。
ここで業者と施主(オーナー)の双方の言い分が食い違い、実際にストップしてしまいました。
当初、業者の言い分では、別添のパンフレットでの仕様と同等のものを建築すると説明したが、あとでオーナーが追加要望を出したというものでした。一方の施主(オーナー)は、見積の時点で曖昧なままで追加工事も言い値で金額に納得できないという状況でした。論点は、追加工事がいくらか?何が項目か?も分からず数千万になった工事費を承認できないということです。
しかしこのような些細なことでも裁判になります。
結果、施主(オーナー)は着工時に支払った代金(工事代金の2/3)の借入に対する銀行返済に苦しみ、物件を手放すしかなくなりました。
これが現実で良いのでしょうか?
目次
はじめに:私の体験「なぜ建築での失敗を伝えたいのか?」
私は賃貸オーナーの1人として、友人よりこのアパート土地活用のトラブル相談を受けました。
そこで、公平な立場で土地活用のトラブル相談に寄り添い、建築会社の裁判に同行、電話取材、弁護士とのやり取りを通じて多くの現実を知りました。
このように一式単価の金額しか表示されていない工事見積が出たり、別途工事が曖昧なまま着工して工事が進む場合は要注意です!
さらにこんな水漏れがあったというのも同じ建築会社のものでした。
この写真は、新築アパートの竣工前なのに建物の隙間から水漏れをしている!?という本当の写真です・・。
こちらも裁判の結果、施主(オーナー)は泣き寝入りをしています。
居室内に浸み込んだ水漏れという事実があるのに、建築会社との最初の契約書が原因で、施主が補修工事の負担をしなければならないという落とし穴があるのです。
明らかに悪徳業者は存在します。
恐らく何度もこのような問題があったため、この業者は有利となるように契約書を作ら最初から書き換えていたのです。
※2022年現在も解決されていない問題の1つです。
そこで、今回は「土地活用で失敗した」という声を基に、施主(オーナー)の立場からアパートの新築をするうえで抑えておくべき知識をまとめました。
1億2600万円の新築アパート工事の経緯
これは実際にアパートを建てた当事者しか分からないかもしれませんが、今も目の前で起こっているのです!
1億2600万円の新築アパートの発注とトラブルの経緯 |
大阪に住むA氏(40歳)妻と3人の子供を持つ脱サラリーマンのケースです。 Aさんは不動産投資を学んで10年。念願の脱サラをして2018年に土地を取得しました。そこで初めての新築アパートを建てるということで、セミナーで知り合ったコンサルタントM氏を通じて紹介された建築会社S社に建築を依頼。Aさんは周囲の憧れであった新築アパートのオーナーとなるために、銀行から2億円近くのお金を借りて不動産投資がスタートしました。 当初、Aさんは建築の契約を進めていく過程において、アパートの建築会社S社から一方的に説明を受けて、契約書への捺印や、誓約書に同意をしていく日々でした。信頼できるコンサルタントM氏の勧めもあるので、「これが当たり前なんだ」としか思わなかったとAさんは言います。 実際にM氏は「これでよいから捺印しましょう」と助言しました。 2019年初旬に契約締結してから数か月後、想定外のトラブルや補修工事が必要だと分かりました。そして数千万円が追加で必要となりました。建築会社S社からは、『追加工事の代金を払わなければすべての工事を止める』と言われました。 その結果、泣く泣くお金を支払わざるを得ない状況に陥ったのです。(次号に続く) |
そこでこの問題の背景について主に3点が挙げられます。
施主は事業主であり消費者ではない
施主のAさんは不動産投資の勉強は沢山したものの、建築に関してはまったくの素人(はじめての経験)でした。
しかし法律上は施主は事業主であり消費者ではないから契約の責任が問われるという点です。
つまり施主は素人扱いはされないという点です。
当然に契約書の内容が優先されるが、中小企業などの工務店では契約書すら存在しないこともありますので注意が必要です。
建築コンサルタントは信頼してよいのか?
アパートやマンションの建設では建築コンサルタントが仲介に入る場合があります。
信頼できる人の紹介だったり、セミナーで評判だからと、コンサルタントを信用しきってしまい、すべての工事を任せっぱなしにしてしまう施主もおります。
しかし法律上はコンサルタントと契約を結ばない限り責任を問えないという点です。
コンサルタントに言われたからと契約書を確認しない、任せたのに失敗しても責任を問えないので注意が必要です。
建築の流れはどうやって確認すればよいのか?
建築の流れには決まりがあるというのが答えです。
しかし契約書を作る義務が曖昧だったり、途中経過報告をする時期もルールが定まっていないため、残念ながらトラブルが多いのです。
そこで、私が皆さんにまずお伝えしたいのが、「絶対に抑えておきたい新築建築の流れ」です。
まずはアパートやマンションの「建築の流れ」を一緒に理解していきましょう。
【失敗から学んだ!1部】:建築前に気を付けておくこと
まずはじめに、建築をする前に気をつけておくべきことをご紹介します。
建築をするときには、
- アパート会社(企画、営業、メーカー、コンサルタント等)
- 工事会社(設計会社、施工会社)
- 金融機関
という3者が登場します。
そこで、彼らと対等に話を進める上で注意すべき点をご紹介します。
①利回りがよい
みなさんは「利回り(りまわり)」と聞いてどんな基準があると思いますか?
不動産の投資をする時は、「利回り」という収益をはかる指標があります。
たとえば、「毎年の家賃に対して、何年で投資回収できるか?」という基準です。
とはいえ、実は「利回り」にはいくつか種類があるのを知っていますか?
利回りの種類 | |
建築利回り | 毎年の収益に対して、建物代金が何年で返済できるかの指標(土地購入代は含まない) |
表面利回り | 毎年の賃料売上(経費を除く)に対して、投資したお金が何年で返済できるかの指標 |
ネット利回り | 毎年の賃料売上から管理費、税金等を差し引いた収益に対して、投資したお金が何年で返済できるかの指標 |
私が実際に見た見積もりの中には、
- 賃料が30年間下がらない想定をしている
- 利回りが8%となるように数字が誤魔化されている
- 修繕積立や経費が圧倒的に少なく見積もられている
といった悪徳な「アパート建築会社がつくった独自の利回り基準」を使うのが実態なのです。
※クリックすると拡大します
実際にアパート経営がはじまると、空室が発生したり、入退去時の費用が大きくかかったりして「想定した利回りにはならなかった」というオーナーの意見があります。
でもはじめて新築を建てる不動産オーナーは「収支想定通りにいくものだ」と信じてしまいがちです。
収支計算をするうえでは、建築計画と収支想定についてをしっかり勉強していくとよいでしょう。
②工事会社の契約書が薄い
工事会社からもらった契約書がペラペラの状態!
「おかしいなと思っていたのだけど、やっぱりトラブルになってしまった」というオーナーの失敗談がとても多いのです。
そこで建築をするうえで確認をしておくべき契約書について説明をします。
まずは、この2つの契約書はもらいましたか?
設計監理委託契約書(設計会社と契約)
→設計図を作成して設計図通りに建物が作られたか?
建築工事請負契約書(施工会社と契約)
→見積書通りの金額で工事が行われたか?
→実施設計図と実施見積書の2つを添付しているか?
この契約書を確認しておかないと、後でトラブルとなることが多いです。
さらに、この契約書がないまま新築アパートが建ち、何十年と経った時に瑕疵担保責任の請求ができない、契約内容に問題がある、契約書が紛失している等がとても多い事例です。
この契約書と契約内容を端的に説明しますと、
(1)設計監理委託契約書とは? |
一級建築士が建物を設計して、その設計図の通りに工事ができているのかを確認することを、監理(かんり)といいます。施工会社との請負契約がしっかりと行われているかをチェックする大切な契約です。 |
(2)工事請負契約書とは? |
工事会社である請負人(受託者)が建設工事を完成させること約束し、建築注文者(委託者)が、その建設工事の施工の対価として、報酬を支払うことを約束する契約です。建設工事は建設業法第2条第1項・別表第一に規定する29種類の建設工事は、この契約書がなければ業法違反で捕まります。 |
ですから、この2つの契約書があるかどうか?この内容が守られるかどうか?を施工会社にしっかりと確認しましょう。
③見積もりに「一式」が多い
見積もりに「一式」と書かれた項目を見たことはありませんか?
このように数量が分からない「一式」だけの表記の見積もりは注意してください。
必ず、どの工事でどのくらいの費用がかかっているのかが詳細に書かれている実施見積を確認してください。
※特に信用を謡って詳細の費用を隠す工事業者がまだまだいます。
④設計会社と施工会社が一緒
アパートやマンション業者が紹介する、設計士と施工会社が同一の工事会社の場合は十分注意をしましょう。
昔からよく言われていることのひとつに、「談合(だんごう)」があります。
建設工事の談合では、営業マン、設計士、施工会社が一緒になって裏で会議をおこない、施主であるオーナーが見ていないところで手抜き工事をしたり、発注の見返りとして金銭の授受を行ったりすることです。
そこで、私は新築工事には「一級建築士」を雇うことをお勧めします。一級建築士の仕事は、設計をすることが大切な仕事の一つですが、もう一つは、その設計通りに監理(かんり)をしているかということが重要な仕事だからです。
たとえば野球に例えると監督とコーチがしっかりと選手を導いているかどうかということです。
この監理が行われないということは、
- 設計図通りに工事をしない
- 建築偽装が行われる(梁や柱を抜いても立証できない)
- 設計時に選定された材料よりも安いもので仕上げる
などの可能性があり、これらはオーナーにとって大きなリスクとなります。
ですから、たとえアパートやマンション業者から設計施工が同時に行える会社の方が「安い」と言われても、自分が信頼できる一級建築士に工事の監理を依頼することをお勧めします。
⑤着工時にどんな契約書をチェックする?
工事の際に契約書はどうやってチェックすればよいのか?
その質問に対する回答として、「建設業法で定められた基準があるので、そこまで契約書を深く読まなくてもよい」です。
その代わりに2つの書類を必ず確認して欲しいのです。
実施設計図(設計会社と契約)
→実際に建物を作る設計図であるか?
実施見積書(施工会社と契約)
→想定見積りから実施見積りの変更点はなにか?
→仕様見積もりとして細かく品番や部材が記載されているか?(一式ではなく㎡単価か?)
この書類を確認しておかないと、後でトラブルとなることが多いです。
この設計図や見積書の内容を端的に説明しますと、
実施設計図とは? |
基本設計に基づいて、施工業者に工事の内容や方法を指示するためにつくられる設計図書のことです。材料の太さから質まで、厳密に書き込まれており、実際の工事ではこの図面をもとに施工します。 |
<設計の流れ> 設計契約 → 基本設計(デザイン起こし) → 内訳詳細の変更 → 実施設計図 |
実施見積書とは? |
概算見積書に基づいて、内訳明細書付きの実施見積書をつくります。 |
<見積の流れ> 想定見積完成 → 3社以上工事相見積もり → 1社工事会社選定 → 実施設計図完成 → 実施設計に基づいて見積 → 実施見積書 |
この2つが工事請負契約書に添付されていないとどんなことが起こるのかといいますと、
- 追加工事が発生する(元々何に対する追加なのかを立証できない)
- 建物が建った後で図面を作成する(見積当初よりも安く仕上げる)
などのリスクがあります。
ですから、建築をする際は、工事請負契約書と共に実施設計図と実施見積書をしっかり確認しましょう。
⑥建築の工程表を出さない
工程表とは、工事をいつまでに、何を行うのかを表したスケジュール表のことです。
建築工事前に工程表を出さない工事会社には注意してください。
一般的に、建築工事は万が一のことを考えて期間を長めに設定します。とはいえ、不慮のトラブルや、中途の設計変更などで工事が長引いてしまうことはよくあることです。
工事会社の中には、竣工が遅延した際の「遅延賠償」や「損害賠償」を恐れて、工程表を出さないこともあります。
ですから、必ず建築工事前に工程表を必ず入手しましょう。
⑦構造計算書がない
構造計算書は、実施設計をする際に一緒に作ります。
構造計算とは? |
構造計算では、建築構造物が積載のほか、地震・台風・積雪などの天災に際して荷重に耐えるのに必要な鉄筋・鉄骨の量などが満たされているかを基準に従って計算します。建物の柱の太さや、梁の量、土台の強さなどによって数値が変わるため、工事を行うなかで梁が数センチでもずれていたり、柱の位置が変わっている場合は再計算をする必要があります。 |
近年では耐震偽装(たいしんぎそう)の問題が取りだたされています。
実際に地震が起きた際に倒壊する恐れのあるアパートやマンションについては、社会の目も厳しくなっていますが、そもそも建築偽装を行う工事会社がいるのです。
つまり、実際の建物が設計図とは違う位置に柱や梁があることです。
ですから、構造計算上は問題なくとも、基礎の柱や耐力壁などの位置が違っていれば、もう一度、構造計算をし直さなければなりません。
ちなみに、行政より建築確認申請が受理されたり、建築の確認済証があったとしても、役所は書類のチェック程度しかしないので、建築会社が誤魔化すことができてしまうのです。
実際に、建築の実施設計図と竣工後の建物の基礎の柱や壁の位置が違っている場合は注意してください。そのためにも、一級建築士による監理を徹底してください。
⑧工事会社(営業マン)の返事が遅い
営業マンの返事が遅い!
もちろん、大きなお金が動く契約を前にオーナーとしても気が短くなり、必要以上に営業マンに質問したくなることもあるでしょう。
オーナーと営業マンの相性・信頼係数は一番大切なポイントです。
実は連絡に気付いているのにメールを返信しない、連絡しても3日以上連絡がない、といった不信感がその後のトラブルに繋がることが多いのです。
相性が合わない・信頼できないならば担当者を変えるか、工事会社を変えましょう。
なぜならば、どんなに工事会社が信頼できても「誤解」があってはトラブルになるので営業マンとしっかり話をしましょう。
さいごに(筆者の体験)
今回は建築会社とのトラブルや、未然に防ぐための8つのポイントについて説明をしました。
実は筆者の私も、新築アパートやマンションの建築を経験した一人です。
実際に新築を建てた経験を持つオーナーの声からは、
- 業者はほんとうに信頼して大丈夫なのか?
- 建築ミスが起こったらどうしよう?
- 相見積もりって何を比較するのか?
といったように、オーナーには様々な不安がつきものです。
この問題の背景には、オーナーは新築の経験が少ないことや、業者が手抜きをしてもオーナーには分からないという構図があります。
筆者である私は現在、不動産オーナーの学校を通じて、何万人という不動産オーナーとお会いしています。
とはいえ、はじめての「新築」なので不安を抱えている人も絶対に多いはずです。
そこで失敗談を聞くなかで、知っておけば成功する秘訣はたくさんあることが分かりました。
もし相談があればぜひ私に問い合わせてくださいね。
一般社団法人不動産オーナー経営学院 学長 横山篤司
REIBSの生立ち
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