【学長講義】不動産投資ファンドが行う家賃引き上げ交渉
2018.04.18
みなさんは不動産投資ファンドを聞いたことがありますか?
不動産投資ファンドとは、投資家から預かる資産を運用し、不動産運用を通じて得た利益を配当するファンドを指します。
今回は不動産投資ファンドが行う、不動産のマーケティング調査と、家賃の引き上げ交渉について、不動産オーナー経営学院の学長、横山篤司が解説します。
賃貸経営学科/2015年学長講義
目次
不動産投資ファンドが考える成功とは?
「家賃が30万円から40万円に値上がりして契約更新決まりました。」
この交渉には、様々なプロセス(交渉過程)があるはずです。
まずはじめにみなさんと考えるのが、
成功とは、満室になることか、成約することか?
を検証しきます。
ここでは、前提となる不動産の基本知識や用語を中心に解説します。
1-1. 不動産の内部成長=家賃が上がる
不動産の価値があがる1つ目の要因は、
「家賃があがること」です。
家賃があがると収入が増えるので不動産の価値が上がります。
1-2. 不動産の外部成長=相場が上がる
不動産の価値があがる2つ目の要因は、
「相場があがること」です。
経済条件が良くなる、周辺環境が良くなると不動産の価値が上がります。
1-3. 不動産の総合成長 売買価格が上がる
家賃が上がり、かつ相場が上がると、不動産の金額が高くなります。
不動産投資では、基本的に安く買って高く売ることを前提にして利益を出す売買益と、毎年の家賃収入によって利益を出す収入益がありますので、
内部成長と外部成長がともに成長することで利益が生まれるといえます。
ここで定義される成功とは、実際に入居成約(せいやく)した事例こそ「結果」です。
不動産経営ではどうかというと、賃貸経営を行っていくうえで、賃貸経営は「家賃」、つまり家賃の売上が高いことであり、家賃が高くなれば不動産を売却するときの売却額も高くなります。これが外資系不動産投資銀行で用いられる「不動産の収益還元」による考え方の原点です。
2. 不動産投資ファンドが行うマーケティング
不動産を所有してから最初に何をすればいいかといいますと、
徹底的に「これ」をやるんです。
徹底的に家賃の賃料相場を分析して、しっかり賃料の最高値と最下限値を調べ、エリアの相場を見極めることです。
2-1. 他の物件と比較する
まずは「他の物件と比較すること」です。
そして、似たような街並みを比較し、それなりに影響を及ぼし合う物件のテナント(入居者)に焦点を当てることです。
そしてその物件の範囲内にある建物と入居者の需要と供給を見極めていくことで、次の入居者候補を見つけることができる考え方のひとつです。
そこで、「同一需給圏(どういつじゅきゅうけん)」という考え方を知っていますか?
3. 同一需給圏を調べていく
まず気を付けるのが「相場」です。
仲介会社が言う家賃相場の事ではなく、分析するために必要なデータから相場を導きだします。
まずは不動産情報の中から、必要な「データ」を取り出して、情報をとしてから相場を読み込まないと、仲介会社の言う通りの募集をしてしまうため、結果として「相場観」に流されてしまいます。
この事例では事務所の空中階(2階以上の家賃相場)は坪単価1.4~1.5万ですから、事務所の2階を店舗に変えようと思えば、店舗の家賃相場を参考にして家賃を上げることで、最低でも坪単価1.8万円となり、まあ賃貸収益は大きく変わりますよね。
3-1. ポイント①エリアの用途(ニーズ)を見極める。
一つ目は物件が存在するエリアの用途を見極めることです。
事務所、店舗、住居など、、どんな用途で貸すかによって収益が変わります。
まあ普通に住居系の賃貸経営をしている人もいるんですけども、たとえば住居から店舗へ。店舗からオフィスに用途を切り替えることによって、これだけ家賃の高低差(レンジ)が違いますので、うまく用途を切り替えてみましょう。
3-2. ポイント②賃料の上限値と下限値を見極める。
二つ目は、賃料相場には上限値と下限値っていうものがあります。
だから、やはりこの位の家賃を払う人達って誰?ということを見極めていくことです。
たとえば、コンビニエンスストア(坪単価2.5万円)はどうか?もしくは現在入居っている介護ショールーム(坪単価1.8万円)どうかと考えることです。まぁその物件の使い方によっては家賃負担能力の高いテナントさんが入ることもあります。
「入る人(入居者)によって家賃が変わる」という発想でもあります。
さらにひもとけば、介護ショールームとして入っている会社さんは、来店者さんが車でやってくることを想定して、駐車場があればいいという発想が前提です。
という点では、駅から徒歩何分という立地で家賃が左右されるわけではありません。
同様に、コンビニエンスストアも、周辺に住居が集まっていれば、そこにコンビニエンスストアあれば近隣住民には十分必要とされているということです。
入居者は誰か?家賃負担能力はどの程度かを見極めること。
いわば入居者の需給バランスがあるということです。
ですから、入居者さんは誰か?というものを見極めながら駅徒歩何分とか、築年数という条件に流されず、しっかりとニーズを狙っていきましょう。というのが2つ目にこの売上を上げるポイントでしょう。
今日の話の発想を広げてみたらどうかという点を見ていきましょう。
3-3. ポイント③物件のテーマ設定と同一需給圏を考える。
三つめは、物件が存在する地域や建物の特性を把握したうえで、どのような入居者を入れるべきかというテーマ設定をすることです。
たとえば、介護ショールームがあるならば、他にも何か医療のつく入居者を上層階に入れる。むしろ2階から5階までを医療関係の会社に入ってもらえば、一階に介護ショールームがあることでぴったりですよね。つまり、医療関係のビルとなれば、おそらくその医療関係のテナントと介護ショールームの入居者が依存し合っているということになります。
うまく不動産経営で儲けるためにはテーマを設定しているということです。
これはマンション経営も一緒です。一階にコンビニがあって、上に住居があれば住居の家賃も相場の1.2倍か1.3倍になります。
3-4. 依存関係、補完関係、協働関係、代替関係をうまく使い分ける。
また補完関係も説明します。
介護ショールームが存在するためには駐車場がないと、そこに来店者さんが車に留めることができません。ってことは駐車場のない介護ショールームはできませんという結論です。
ここが駐車場が無ければここは存在しない。あくまで入居者さんのニーズを紐解いて、物件の入居者募集条件に「駐車場あり」と書いておくことです。そうすることでこの介護ショールームさんが入りやすくなりますので補完関係です。
次に協働関係です。
協働関係であったほうが集客が見込める。つまり医療ビルに加えて、お医者さんも入れてしまうことです。まあお医者もつけちゃい、耳鼻科、内科、と入れて1階の一区画にドラッグストアも入れてしまえばとことん特化できます。
そうすることで、ドラックストアが求めているのは、お医者さんが集まっていれば、そこで処方箋が出せて商売が成り立つ。この協業関係が成り立つということです。
さらに代替関係です。
医療ビルがその近隣にもう1,2棟あると、そのエリアには医療が集まるエリアとして認知されます。たとえば、住居エリアでマンション群の中にお医者さんがたくさん集まることで、そのエリア一帯の認知が高まり、住みやすい街になりますという代替関係が成り立ちます。
4. まとめ
入居者さんは良く言います。
「こういうビルはないんですか?」
仲介店へ来るお客様に対して、お客様の条件にあうビルやマンションを提供することです。
また、場所についても、高田馬場か、新宿か、渋谷か、といったエリアが違っていても「駅近の物件」を求めているお客様ばかりではないのです。
駐車場付きのビルがよい。駅から10分、15分と離れていても、そこに入りたいというお客様を想定するのがマーケティングです。
この家賃の相場観というのがあくまで基準です。
データで示せれば、そこから我々がその相場を超えて家賃を引き上げる提案ができます。
それが、相場を超えて家賃を作り上げるための説明となります。
一般社団法人不動産オーナー経営学院 代表理事 横山篤司