【横山篤司ANDY学長の研究とビジョン】タウンマネジメントの歴史

タウンマネジメントとは、住民・事業主・地権者等が主体的にまちづくりに取り組む手法の1つである。
タウンは街、マネジメントは管理の略であり、主にまちづくりをテーマとしてソフトとハードの両面を管理していくことを指す。

磯子タウンマネジメント倶楽部の活動の様子
元々は、1990年代に中心市街地活性化のために市町村や商店街等の事業者が中心となってTMO(Town Management Organization)を設立し、活性化事業を推進する方法で始まったが、十分な成果が得られなかった。
2000年代に入り、「森ビル(東京都港区)」を代表とする商業事業者が活動領域を地権者を巻き込んで再開発にまで拡大させ、市民参加型の活動へと展開させた。代表例は「六本木ヒルズ」や「虎ノ門ヒルズ」である。
手法は、市街地再開発の構想の段階から「タウンマネジメント」の事業部を立ち上げ、住民・事業主・地権者等が一緒にまちづくりへの理解を深めるワークショップや、行政を巻き込んで都市機能を向上させる都市再整備を同時に行うことである。
タウンマネジメントの主な対象地は中心市街地である。
私が思うタウンマネジメントの魅力は、
① 不動産の賃貸ビジネスを軸とし、開発段階で都市機能の向上(安全安心)や容積率アップによる収益性向上や投資対効果が高まることである。
② 開発後もタウンマネジメントを継続できる会社組織の仕組みがあることである。
③ タウンマネジメントを通して街の関係人口を増やす賑わいやコミュニティの活性化を促し、付加価値を向上させることである。
その結果、投資対効果では15年で投資返済を終え、現在も家賃が上がり、空室率が下がる賃貸ビジネスを経営している。
そして2025年以降は、日本の少子高齢化時代における中心市街地の在り方やタウンマネジメントが求められています。ここではタウンマネジメントの最新研究も紹介していきます。
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タウンマネジメントの歴史
タウンマネージメント(TMO)
元々、タウンマネージメントは、1998年の「中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律(略称:中心市街地活性化法)」における中心市街地活性化策の目玉として導入された。TMO構想を作成し、構想について適当である旨の市町村の認定を受けたものを認定構想推進事業者、いわゆるタウンマネージメント機関(長音表記が正式な表記)としている(2006年6月に新法へ)
認定構想推進事業者は、商工会議所、商工会、第三セクター機関等である。
特徴は、
・行政や団体、第三セクター主導であること
・公共の道路や建築物等の再整備に併せた商業地の活性化であること
・まち全体をショッピングモールと捉えて経営すること
などが挙げられる。
整備対象は、主要な道路、公園、駐車場および公共建築物等の再整備に加え、民間の空き店舗や商店街等の管理である。
私の論点では、90年代のタウンマネージメントでは収益に関する仕組みの欠如、関係者の責任所在が曖昧であるという点である。ここで「十分な成果が得られなかった」と評価される理由は、資源が少なく魅力に欠けた中心市街地の再生では収益を得るのに時間がかかることや、失敗を恐れて責任の所在を市町村や国といった曖昧な存在のせいにしてしまうことであろう。
90年代のバブル崩壊後の社会背景をみても、収益性や責任所在という問題が大きかったと言える。
この論点に関する詳しい研究はまた述べるものとする。

森ビル六本木ヒルズの広場写真
森ビルのタウンマネジメント
森ビルのタウンマネジメントは、2003年に竣工した「六本木ヒルズ」や、2011年に竣工した「虎ノ門ヒルズ」に代表される民間主導の都市再開発とマネジメントである。森ビルは東京都港区を発祥とする地主であり、森泰吉郎氏およびその親子(森稔氏、森章氏)によってわずか50年で日本一の地主となった会社である。
1986年に竣工した「アークヒルズ」での経験を踏まえ、六本木ヒルズの開発では初期段階よりタウンマネジメントを導入し、ワークショップを通して地権者の理解を得ながら再開発をした結果、地主の約8割が再開発後も地権者(入居者)になったことである。これはアークヒルズが地主の約2割しか地権者(入居者)にならなかったことを鑑みれば成果は明らかである。
再開発事業者は、民間主導の開発会社である。
特徴は、
・民間主導の再開発+管理ビジネスであること
・地権者が再開発後も関わり続けること
・統一管理者となって付加価値を向上させること
などが挙げられる。
整備対象は、旧市街地や商業ビル、道路や公園などの整備を一体で再開発し、その後の管理や整備を行っている。
私の論点では、2000年代のタウンマネジメントではリーダーが必要となる、地権者合意に時間がかかるという点である。民間主導では強烈なリーダーシップ(ヒト)が不可欠であり、ヒトモノカネを集める企画が初期段階では必要となる。また日本では土地の所有者=地主がその土地の利用に関する権限を持つため、行政や市民(入居者やまちづくり団体等)の意思だけでは事業が進まないことであろう。
なお、他の大手不動産会社では同様の取り組みに対して異なる呼称を使っている。
・森ビル=タウンマネジメント
・三井不動産=エリアマネジメント
・三菱地所=まちづくり

大成建設の未来都市モデル
未来のタウンマネジメント構想
中心市街地の再整備において、次の時代に求められるのは、産官学主導による未来のタウンマネジメントである。
まず、タウンマネジメントの定義を中心市街地の再開発後に行う賑わい創出やコミュニティの再構築といった地域活性化を目的とするならば、人口減少する地方都市の中心市街地で地域の魅力を発信したり産業誘致を行うこととは切り離して考えるべきである。
その理由は、地域活性化はすでに存在する豊富な資源やヒトを活性化させることが目的だからだ。つまりバクテリアで例えると、AとBとCという様々なバクテリアがいてこそ、その組み合わせを変えたり、新たなD、Eというバクテリアを入れ込んで活性化させることができる。
一方、地方都市では中心市街地が劣化し、コミュニティの崩壊や資源の枯渇が同時に進むなかで、むやみに外部にPRしたり人を誘致して活性化を促せばどうなるかは明解であろう。バクテリアで例えると、Aしかいない中で、新たなDやEを呼び込むため、Aを殺してしまう恐れがある。少なくとも活性化を目的とした手法ではなく、地域創生を目的としてコミュニティや地域資源の再設定が必要だと私は考える。
整備対象は、
行政=道路や公園等を含む公共施設や公共サービス等のインフラ再整備
学校=地域の人づくり、新たな産業づくり
産業=集中投資、効率性や収益性を見直す
たとえば魅力の欠けた都市では、学校や産業が限られるために優秀な人材が集まらずに都市空洞化や人口減少していく課題があり、さらにインフラ再整備の遅れによって都市環境が悪化した結果、行政の財政が圧迫されていく状態に陥ってしまう。
間違っても、このような魅力が欠けた都市の状態で「空き家対策」や「人材バンク」などの活性化対策をするべきではない。
また人口減少が加速する中で民間主導による再開発で「容積率アップ」や「ニュータウン誘致」は数年後にさらなる収益悪化へとつながる恐れがある。
まずは産官学の観点から創生をするべきである。この論点に関する詳しい取り組みはこちらで紹介します。
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