賃貸経営(不動産経営)の決算対策攻略ガイド。黒字分を上手くおさえる方法とは?
2021.11.15
利益の黒字分を上手くおさえたい。
と今期の利益が大きく出てしまったので、他の事業の赤字を合算して税金支払いを抑えたいと思う人もいるのではないでしょうか。
実は、損益通算(そんえきつうさん=損失と利益を合算)という方法で課税対象となる黒字を抑える方法があります。
たとえば、今期利益1000万円出た場合、法人税300万円の支払い(法人税を30%超と仮定した場合)が必要となります。
そこで他の事業に-500万円の損失が場合、今期利益から損失分を引いた利益500万円が課税対象となり、法人税150万円の支払い(法人税を30%超と仮定した場合)となるので、損失分を合算することで税金を半分近く減らすことができます。
このように、損益通算を行えば節税効果が高く、かつ簡単に行える対策なのですが、実は多くのアイデアやテクニックが必要となります。
加えて、税理士からのアドバイスには頼れない、経営者としては「一歩先の行動」が必要となります。
なぜならば、税理士によっては意図的な節税は望ましくないと考える方も多く、一歩間違えれば「脱税」とも解釈されるため、税理士等の専門家が提案をすることができないからです。
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こんにちは。不動産オーナ-経営学院の学長の横山です。
今回のテーマは「賃貸経営(不動産経営)の決算対策攻略ガイド」です。
私はこれまでの10年間で1万人以上の不動産オーナーさんとお話をしてきました。また私自身も実際に不動産を所有、経営するなかで、ほんとうに不動産経営をしている人はどんな節税をしているか?という点を中心に調べてきました。
そこで、シリーズ「賃貸経営(不動産経営)」では、不動産事業で成功しているオーナーへヒアリングをし、深堀した情報やノウハウを中心に解説していきます。
目次
不動産経営で決算対策はできるか?
たとえば、あなたの会社で今期(今年度)に不動産を売却して大きな利益が出たり、多額の収入があって黒字となった場合、どんなことを考えますでしょうか。
〇どんな黒字が出ても当然税金は払う
〇できる限り今期の利益を調整しておく
〇黒字になったことを隠したい
など経営者によって様々な考えがあるのではないでしょうか。
事業を営むうえでは、毎年の税務申告時に今期(今年度)の利益を確定させて、決まった時期に税金を支払うことが義務付けられております。基本的に来年(次年度)以降の利益となるように黒字を後ろ倒しにしたり、利益の申告を遅らせることはできません。
では今期(今年度)の利益が予想以上に黒字となった場合に、いかにして当年度の利益が多くなり過ぎないように抑えていくのか?あるいは逆に赤字が多くなった場合に、いかにして当年度の損失が多くなり過ぎないようにしていくのか?を考えていきましょう。
具体例)賃料収入1000万円のオーナーの確定申告書
資料1:税務申告時とキャッシュフローの比較
まずは、この表をご覧ください。不動産経営では毎年一定の家賃収入が安定的に入ってくるため、当然、利益も生まれます。
そこで、この例の左下をご覧ください。「税務申告上の利益」が280万円(28)となっています。
次に右下をご覧ください。「キャッシュフロー上の手残り現金」は30万円(3)しか残らない状況となっています。
節税対策を行う前は、1000万円の家賃収入に対して280万円の利益が出たが、実際の手残り現金は30万円という状況です。
※一般的に、不動産事業では毎年一定額の利益が見込めるが、計画的な節税対策を行わなければ、毎年、多額の税金を支払うことになります。
賃貸経営(不動産経営)の税金と節税の仕組みを徹底解説。所得税の還付金を得る方法とは?
不動産経営での決算対策まとめ
決算対策をするうえでどのようなことができるのかを3点紹介します。
利益調整(りえきちょうせい)とは
利益調整とは、そのとおり、利益を調整するという意味です。利益調整対策は、主に3つのポイントを基本として考えていきましょう。
- 損益通算(そんえきつうさん)→損失(赤字)と利益(黒字)を合算すること
- 繰越控除(くりこしこうじょ)→損失の金額を翌年以後の所得金額から控除する(差し引く)こと
- 特別利益(とくべつりえき)、特別損失(とくべつそんしつ)→その期だけ特別な要因によって発生した利益や損失のこと
当期決算内で「損益通算(そんえきつうさん)」する
損益通算(そんえきつうさん)とは、一定期間内の損失(赤字)と利益(黒字)を合算し、最終的に利益が出たか、損失が出たかを算出することです。
例えば個人事業主の場合は、企業勤めで給与所得を得ており、かつ副業で親から受け継いだマンション経営をしている人が多くおります。マンション経営で赤字を出したときに、赤字分を給与所得から控除できることが損益通算になります。かつ、その事業を営むなかでの必要経費として、ローン借入の金利利息や固定資産税、火災保険料、減価償却費なども不動産所得として組み入れることができます。
さらに、日本では、給与所得に対して累進課税(るいしんかぜい)という所得の多さによって所得税率を段階的に引き上げる税制があります。
そこで副業で賃貸事業を行い、損益通算によって給与所得の課税対象額から控除を受けることで、所得の赤字分に応じて税金が戻ってくる(還付)ことも、不動産事業を行うメリットの1つといえます。【資料4】
ただし、個人事業主の場合は損失が発生した場合、ほかの黒字の所得から差し引けるのは下記4つに限定されています。
・不動産所得
・事業所得
・山林所得
・譲渡所得
個人事業主の場合は、損益通算の期間は1月から12月までの1年間です。
また、この損益通算を活用して、さまざまな事業と組み合わせることで利益調整することができます。
例えば、事業、不動産、給与、譲渡、その他の売上があった場合に、上記のように損益通算の組み合わせで、4-2+3-1+2=6という計算方法で、当年度の所得で黒字と赤字を合算させて調整することができます。当年度に不動産を売却して利益を出そうと思っていたものを、次年度以降に持ち越す計画をすることもできます。
過去の赤字を「繰越控除(くりこしこうじょ)」する
繰越控除(くりこしこうじょ)とは、その年に生じた損失の金額を翌年以後の所得金額から控除する(差し引く)ことです。
税金の申告は、毎年必ず年度内に支払わなければならず、また過去に支払った税金を取り戻すことはできません。
たとえば不動産事業においては新築時には家賃収入が多く税金を多く払いますが、築古(築15年目以降)になると修繕費や赤字が膨らむことが想定されます。そこで修繕費等の損失を、過去の賃貸収入の黒字分で埋め合わせできないか?と考えるものです。ここで、過去の赤字を繰り越して将来黒字となったときに、この過去の赤字を差し引くことができます。
これを繰越控除といいます。
この赤字の繰越控除は個人事業主であれば過去3年間、法人であれば過去9年間の赤字を繰り越しできます。
たとえば、上記のように物件の大規模リフォーム工事を前もって実行し、将来の賃料収入を見込んで、過去の赤字分を相殺することも戦略の一つです。
「特別利益/損失(とくべつりえき)」を活用する
特別利益/損失(とくべつりえき)とは、その期だけ特別な要因によって発生した利益や損失のことです。
特別利益や特別損失はあくまで当期だけのものあり、翌期以降は「発生しない」というものです。
<特別利益>
- 不動産などの固定資産売却益
- 長期間保有している株式や証券売却による売却益
- 引当金による戻入益
- 債務免除による債務免除益
<特別損失>
- 不動産などの固定資産売却損や固定資産除去損
- 長期間保有している株式や証券売却による売却損
- 回収不能となった賃料の貸倒損失
- 火災や自然災害、盗難などによる損失
- 契約違反や違約金などの一度限りの損失
たとえば、建て替えに伴う立ち退き料、解体費、建物の滅失分を除却損とすることも考えられます。
まとめ
不動産を事業として経営していくうえでは、「決算対策(けっさんたいさく)」はとても大切です。
なぜならば不動産経営はひとつの事業であり、税金対策をせずに不労所得あるいは税金を払うものだとを考えていますと、多額の税金が発生するからです。また新築時は賃貸収入等の黒字(利益)で安定しますが、築15年以降には修繕費や空室による赤字(損失)にも対応せねばなりません。
少しでも多くの方が、「勝ち残る不動産オーナー」となるために、不動産オーナー経営学院では実践的なワークショップや事例検証を通じて一歩一歩理解を深めていくカリキュラムが充実しております。
不動産オーナー経営学院「資産運用学科」のテキストより
詳しくはwww.reibs.jpをご覧ください。
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